2007年8月13日
国の控訴に対する声明
薬害肝炎訴訟全国原告団
代表 山 口 美智子
薬害肝炎訴訟全国弁護団
代表 鈴 木 利 廣
国は、本年8月10日、薬害肝炎名古屋地裁判決(2007年7月31日言渡)に対し、控訴した。
この控訴は、司法によって国の法的加害責任が4度にわたって断罪されながら、何の反省もなく控訴した点で、極めて不当である。また、再三にわたる原告団からの厚生労働大臣面談要請を拒否し、原告らの被害実態と一切向き合おうとすることなく控訴したことは、原告らの心情を踏みにじる行為として、到底許されない。
国は、控訴会見において、名古屋地裁判決を「医薬品自体には問題がなかったものの、医師が患者に安易に医薬品を不適正使用したとし、その点について国に指示・警告義務違反を認めるものです」と理解するとの認識を示した。
しかし、名古屋地裁判決は、医薬品が重大な副作用を有する場合には、厚生大臣は、副作用の危険性について明確な記載をさせる措置を採らなければならないと指摘した上で、その措置は「
重大な副作用を有する医薬品から患者の安全を確保するために不可欠のものであり、同医薬品は、このような措置を採ることによって有用性を肯定されるものというべきであるから、厚生大臣の上記措置は、製造承認と一体のものとして、行われなければならないものというべきである」(判決文p162)と述べ、重大な副作用に関する指示・警告措置を欠いた医薬品には有用性を肯定しえないことを明確に指摘した。それにも関わらず、「医薬品自体には問題がなかった」と述べる国の態度からは、今回の判決内容を真摯に検討した姿勢は全くうかがわれない。
また、国は、控訴会見において、「フィブリノゲン製剤訴訟・名古屋地裁判決」との呼称を用いたが、名古屋地裁判決において、フィブリノゲン製剤のみならず、第Ⅸ因子製剤についての法的加害責任を認定されていながら、かかる呼称を用いること自体、国が薬害肝炎被害についての法的加害責任を真摯に受け止めていないことを、如実に示している。
名古屋地裁判決は、薬害肝炎を引き起こした国の姿勢について、「
厚生行政の基本的責務に反したものとして、非難を免れることはできない」と厳しい叱責を加えた判決である(判決文p295)。この叱責を全く無視して、何一つ反省を示すことなく不当な控訴を行った厚生労働大臣の責任は極めて重大である。
我々は、現在もなお、厚生行政の基本的責務を理解しようとしない国に対して強く抗議するとともに、あるべき薬事行政を国民の手に取り戻すため、これからも全力を尽くす所存である。
以 上