11月7日に、大阪高裁が、正式に和解勧告をしたことを受け、本日、名古屋高裁に対する和解勧告の上申書を提出しました。
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平成19年(ネ)第788号
薬害肝炎損害賠償請求控訴事件
一審原告 原告番号1番 外7名
一審被告 国 外3名
2007(平成19)年11月9日
名古屋高等裁判所 民事第2部 御中
和解勧告を求める上申書
一審原告ら訴訟代理人弁護士 柴 田 義 朗
同 堀 康 司 外
第1 上申の趣旨
一審原告らは、貴裁判所に対して、薬害肝炎訴訟の早期全面解決のため、早期に和解勧告をされるよう上申致します。
第2 上申の理由
1 一審被告らの法的責任が明確であること
薬害肝炎訴訟は、2002(平成14)年10月大阪、東京の両地裁を皮切りに、福岡、名古屋、仙台の各地裁に提訴され、全国5地裁で審理されてきました。昨年6月の大阪地裁判決、8月の福岡地裁判決を始めとし、東京、名古屋の各地裁でも判決が言い渡され、本年9月7日の仙台地裁の判決により、全国5地裁の判決が出そろいました。
大阪、福岡、東京そして名古屋地裁判決では、国の杜撰な薬事行政が指摘され、国の法的責任が認められました。
他方、9月7日の仙台地裁判決は、国の法的責任を否定しましたが、先の4地裁判決と比較しても、判断の前提となる重要な事実を見落としているなど、極めて不当な判決であることは明白です。
国の責任を認めた4地裁判決により、国の法的責任は明確になりました。
2 早期解決の必要性
薬害肝炎訴訟の一審原告らは、その多くが20年以上前にC型肝炎に感染しており、慢性肝炎、肝硬変へと日々病状が進行しています。既に提訴から約5年が経過し、この間にも、病状が悪化し全国で5名の原告が亡くなっています。名古屋原告の中にも、すでに肝癌を発症するまでに病状が進展した患者が含まれており、本件の解決はもはや待ったなしの状況にあります。
3 高裁における審理状況
現在、福岡、大阪、東京、名古屋の各地裁・高裁において、また、仙台高裁において、審理が行われています。
大阪高裁は9月14日の口頭弁論期日において「10月15日までに原告被告から和解案を提出してもらい、双方から意見聴取を行い、少しでも和解解決の可能性があれば和解勧告を行いたい。」と述べました。この大阪高裁の意向をふまえ、全国の原告が協議して作成した「和解骨子」を、10月15日に提出しました。その後、大阪高裁は、原告被告双方から和解解決に向けた意見聴取を行い、その結果、和解の席につくという被告らの意向表明があり、和解調整の可能性があるとの判断に至り、11月7日の口頭弁論期日において和解勧告を行いました。
福岡高等裁判所に対しても、10月15日に和解勧告を求める上申書を提出しました。
4 政治情勢
与野党ともに、肝炎対策プロジェクトチームを立ち上げ、肝炎治療の問題のみならず、薬害肝炎訴訟の解決を視野に入れた取組が進んでいます。
民主党は、10月2日に特定肝炎緊急対策措置法案を参議院に提出し、今後、厚労委員会、本会議において審議されることになります。
与党プロジェクトチームも、肝炎治療費助成に向けた予算措置について検討を開始しています。また、10月10日、原告らと面談して被害実態の聴き取りを行うなど訴訟解決に向けて動き出しました。
その上で、福田内閣総理大臣は、「薬害肝炎問題について国に責任がある」と発言し、舛添厚生労働大臣も、11月2日「訴訟については11月中に解決したい」「国に責任がある以上謝罪するのは当然である」と述べた上、11月7日午後、原告らと面談し、和解協議に誠実に対応し早期解決を目指すことを表明しました。
5 結論
このように、訴訟において審理が尽くされ全国5地裁の判決が出そろい、大阪高裁が和解勧告を行うとともに、世論・政治の場において解決の機運が高まっている今こそが、薬害肝炎訴訟を全面解決するにふさわしい時期というべきです。
そして何よりも、C型肝炎が進行性の疾患であり、原告らの病状が日々進行していることから、もはや残された時間がありません。
そこで、貴裁判所において、和解勧告を求める原告らの強い思いを正面から受け止めていただき、薬害肝炎訴訟の早期全面解決のための和解勧告をされるよう本上申を行う次第です。
以 上
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(弁・堀)